自筆証書遺言とは?

 遺言をされる方(遺言者)が、遺言書の①全文、②日付、③氏名を自ら書き、押印しなければならないとされています。
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)により、平成31年1月13日以降に作成する自筆証書遺言については、相続財産目録(各ページに署名押印は必要です。)を添付するときは、その目録については自書しなくてもよくなりましたので、不動産や預貯金の特定を誤る可能性が少なくなりました。また、法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)により、令和2年7月10日以降、自筆証書遺言を法務局において保管してもらえるようになります。

自筆証書遺言のメリットは?
(公正証書遺言との比較)

  • 時間と費用がかからない。
    自筆証書遺言の場合は、ご自身で記載すれば良いので、費用は基本的にかかりません。
    公正証書遺言の場合は、公証人の費用が必要です。
    公証人と司法書士の専門家のチェックが入るので、安心料と言えるかもしれません。
  • 公証人と証人2名に遺言内容を口頭で言わないといけない。
    自筆証書遺言の場合は、誰にも言わずに遺言書を書くことができます。
    公正証書遺言の場合は、遺言内容を話さないといけないですが、公証人や証人である司法書士などには守秘義務がありますので安心です。

自筆証書遺言のデメリットは?

  • 遺言書が無効となるリスクが多い。
    自筆証書遺言は、遺言者自ら、遺言の内容の全文を手書きし(例外あり)、日付、氏名を記載し押印しなければなりません。それ以外にも、厳格な要件があり無効となるリスクがあります。
  • 遺言書を破棄・隠匿される可能性がある。
    自筆証書遺言の場合、自己に不利なことが記載された遺言書が発見された場合、破ったり、隠したりされる可能性があります。
    公正証書遺言の場合、公証役場にて謄本を発行していただけます。
  • 遺言書が紛失する可能性がある。
    自筆証書遺言の場合、遺言者が譲り渡したい方へ遺言書を渡さずに発見されない場合があります。
    公正証書遺言は、基本的に20年間(ある公証役場は、遺言者が120歳になるまで)、公証役場の金庫で保管されます。仮に、公正証書遺言の正本を紛失しても、公証役場が謄本を作成してもらえます。
  • 検認という手続きが要る。
    自筆証書遺言は、遺言者が亡くなったら開封せずに家庭裁判所にて検認という遺言書の開封作業をしなければなりません。そのときに他の相続人に通知されるため、遺言執行に時間や手間が生じます。

法務局における自筆証書遺言保管制度とは?

 自筆証書遺言には、上記のようなデメリットがあります。遺言書の破棄・隠匿、紛失するリスクをなくし、検認という手続きが要らなくなる制度が法務局における自筆証書遺言保管制度です。

自筆証書遺言の書き方

 本文(財産目録を除く)、氏名、日付を自筆する場合の遺言書の一例です。物件等目録は、パソコンで入力しプリントアウトすることもできますが、不動産登記事項証明書や金融機関の通帳をコピーして利用することも可能です。

           遺言書
1 私は、私の所有する別紙目録第1記載の不動産を、長男A (昭和○年○月○日生)に相続させる。
2 私は、私の所有する別紙目録第2記載の預貯金を、長女B (昭和○年○月○日生)に相続させる
3 私は、上記1及び2の財産以外の預貯金、有価証券その他一切の財産を、妻C(昭和○年○月○日生)に相続させる。
4 私は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
  住  所 
  氏  名 
  職  業 
  生年月日 昭和○年○月○日

 令和2年5月1日
  住  所
  氏  名     X 印   ←全文自書してください。

           物件等目録
第1 不動産
 1 土 地
   所  在
   地  番
   地  積
 2 建 物
   所  在
   家屋番号
   構  造
   床 面 積
第2 預貯金
 1 ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号 ○○○
 2 ゆうちょ銀行 通常貯金 記号○○○ 番号○○○

  氏  名     X 印   ←この部分は必ず自書してください。