相続財産管理人が選任されます。

 相続人の存在せず、また存在しないことが明らかでないとき(相続人「全員」が相続放棄をした場合も含まれます。)は、被相続人の債権者や特定遺贈を受けた者、特別縁故者などの利害関係人の申立てにより、家庭裁判所は、相続財産を管理する人(相続財産管理人)を選任します(民法第952条)。

相続財産管理人の仕事は?

 相続財産管理人は、被相続人の債権者等に対して被相続人の債務を支払ったり、債権を回収したりするなどして清算を行います。また、被相続人と特別の縁故のあった方(特別縁故者)に対する相続財産分与の手続きを裁判所の審判のもと行います(民法第958条の3)。不動産が共有(2人以上で所有)している場合には共有者に帰属させます(民法第255条)。そして、清算後残った財産を国庫に帰属させることになります(民法959条)。

相続人がいない場合とは?

 法定相続人は、以下の表のとおりです。
つまり、次の①から④のすべてに該当する場合には、相続人がいらっしゃらない可能性が高いです。
①一度も結婚していない。
②子供がいない。養子がいない。
③両親・祖父母・養親がお亡くなりになっている。
④兄弟がいない

第1順位配偶者
直系卑属
(子・子が被相続人より先に死亡しているときはその子)
第2順位配偶者
直系尊属(両親・親が死亡しているときは祖父母)
第3順位配偶者
兄弟姉妹・兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡しているときはその子(甥・姪)
※再代襲(甥・姪の子には、代襲相続されません。)

相続人がいない場合、財産の承継はできない?

 上記のとおり、被相続人と特別縁故関係にあった方は、その財産分与の手続きにより、被相続人の財産を取得できる可能性があります。ただし、相続財産管理人選任申立手続では、予納金が数十万円以上かかる場合もあります。相続財産管理人選任手続き開始から特別縁故者か否かの審判が下りるには、最低13か月の期間を要します。当事務所で裁判書類作成をしたケースでは、受任から2年以上の期間を要しました。
 このような手続きは、時間と費用を要しますので、法定相続人がいらっしゃらない方は遺言書の作成をお勧めいたします。